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2017/03/26

藤森隆郎先生の勉強会に参加してきた

と、新刊の出版記念というわけではないのでしょうが藤森先生の学習会が奈良で開かれたので聞きに行ってきました。

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「森林・林業で後進に伝えたいこと」というタイトルでした。

ここで配布されたレジュメがとても良かったので、ざっと引用します。


・我々に必要なビジョン
我々の大きな社会理念は、持続可能な循環型社会の構築であり、それは地球環境(地球生態系)問題まで考えることである。
地球環境問題の解決は、それぞれの地域の生態系にできるだけ沿った生活や産業のあり方を重視していくことにある。


・グローバルな市場経済の中での森林・林業
本来の森林・林業は極めて長期的なビジョンの中で管理・経営を考えるものであり、それは持続可能な循環型社会の構築のために不可欠なものである。
当面は現状の市場経済の中で創意・工夫を働かせ、森林・林業の改善に努めていかなければならない。
森林所有者、素材生産者、製材所、工務店、消費者の間の顔の見える関係を地域ごとに築いていくことが大事である。
林業の振興と地域の振興は一体的であり、その集積が日本の林業である。
森林生態系の多面的サービスの価値を、都市住民を含めてよく理解し、それを持続的に発揮させていくための国民的合意を図っていくことが重要である。
そしてその合意に基づく所得補償のような制度の確立に力を合わせていくことが必要である。


・森林生態系のサービス
生態系サービスの中で最も基盤的なサービスは「生物多様性」である。それはもう一つの基盤的サービスである、土壌の機能を高めるからである。
生物多様性と土壌のサービスによって、持続的な生産と水源涵養機能が担保され、保健文化機能も発揮される。
そのようなサービスを担保する森林の姿は「構造の豊かな森林」である。
構造の豊かな森林は、どのような環境や社会情勢の変化に対しても、弾力性と柔軟性が高く、長期的に見て最も低コストである。
また、天然林を適切に配置することも流域としての構造の多様性を高めるために必要なことである。


・技術者育成の重要性
林業技術者が誇りを持てるような雰囲気は日本にはない。
人を育てることこそ最も大事なことである。
技術者のリーダーとして、ドイツにおけるようなフォレスターを育成し、その活動を保障するシステムの構築が不可欠である。


・林業と木材産業の関係
木材生産のための森林づくりにいくら努力しても、生産された木材が正当な価格で取引されなければ、経営は成り立たず、したがって良い森林づくりはできない。
山側には絶対に譲れない山側の基準があることを見失ってはならない。
その基準が何なのかを林業関係者はしっかりと語れなければならない。
材の評価の最終決定者は消費者である。
消費者が木材のことをよく理解し、それぞれの質に応じた適切な材価を理解してもらえるように、木材生産側も木材産業もお互いに努力をしていくことが大事である。


・法律・制度の抜本的改正が必要


・おわりに
我々はどういう国を作っていくかという中で、森林・林業を考えていかなればならない。
森林・林業の本質を理解し、自己実現と社会貢献に努めれば、森林・林業関係者は自らの仕事に誇りが涌くはずである。自分の仕事に誇りを持てることこそ幸せなことである。

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では、次に学習会の内容をざっと紹介しようと思うのですが、とうぜん上記の内容とかぶってますので、特に大事と思うところだけ。

・日本をどのような国にしていこうとするのか、その答えがない限り森林林業も良くはならない。
できることは?
森林生態系の機能とその中で人類社会が求めている森林生態系のサービスを理解して、それに基づく合意形成を作ること。
それに科学的根拠を与えること。

・本来のフォレスターはどんなことをすべきなのか
組織の論理から離れて考えて欲しい。

・ 地球環境問題。生態系の中で生かされている。生態系があってこそ。地域の生態系にできるだけで沿った生活や産業にすべき。
森林林業はどう貢献できるか。発展させて行かねばならない。
林業関係者だけでは無理。国民全体で考える。
私は誇りをもって話せる。
地域の生態系に反しない生活をしていく。

・地域で循環するということを外してはいけない
地域の6次産業に貢献すること。
それを踏まえて余った分、それ以上は川下に流す。
いまは地域で循環することを忘れて川下に売ることばかり考えている。
村の家がハウスメーカーばかりというのは異常。それをきちんと正さないといけない。それを説明するのか関係者の務め。

・生産林を目的とする場合、生物多様性とは相容れない。例えばスギヒノキだけとか。
できるだけで広葉樹があった方が100年200年後は利口なのではないか。
下刈りや除伐を減らして残すだけでいい。

・育成。誰がやるのか。現場に技術者がいない。研究を生かしてくれる人がいない。キャチボールする相手がいないから、研究者は学会で評価される基礎的な研究に走る。

・ドイツは木材生産しながら一般市民が来て楽しめる森にしている。つまり明るく生物多用的な森。

・ 森林について誇りをもって語れるようになって欲しい。これが伝えたいこと。

・森林の区分。

経済林:スギヒノキとか
生活林:その地域で必要な林。薪炭林。余剰物を町に売る。基本は森林所有者が使う。
環境林:生物多様性、水源管理
目標林型が見えてくる

・奥多摩? 「プラットホーム」という言葉を使っていた。工務店と製材所と山が顔の見える関係を築く。「スギは立米6万円を保証します」


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以上です。
僕は藤森先生の話を伺うのは実は初めて。
著書はどれも素晴らしいので、とても楽しみにいたのですが、とにかく僕には「誇りをもって仕事してほしい」という言葉が響きました。
なんだか力がもらえたような気がします。

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でき杉」カテゴリの記事

コメント

「スギは立米6万円を保証します」

銘木市とかじゃなくて一般材で?
現実を知っている人間からすると、夢か詐欺のように聞こえるのですが、
それは私の心が曇っているからでしょう。

ただし夢と希望を持つのは人間にとって良いことなので、人様の夢の
あげあしをとる気はありませんよ。
そのようなことを何世代も繰り返したあげく、今日の林業の有様があるのです。

投稿: gotoれす | 2017/03/28 23:26

gotoさん、その製材所なり工務店なりが求める品質に適合していたらその価格を保証するという話でした。

吉野でも杉で6万というのは珍しいですが、東京なら十分ありえる話なのかな、と。
決して夢なんかじゃないですよ。

吉野では元玉、2番、3番というのはしっかり区分されていて、一本一本刻印を打ってどの業者がどこから出してきたのか管理されてます。
「顔の見える関係」が築かれていて、良い原木であればきちんと評価されますから、やりがいはありますよ。

東京はさすがに物価が高いですが、良いものをきちんと評価する体制を作る。
同じことだと思うんですよね。

投稿: でき杉 | 2017/03/31 00:03

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