枝打ちに適した鋸を徹底比較!前編(追記)
さて、お待たせしました。
いよいよ最強の枝打ち鋸を決める祭典N-1グランプリ開催っっつつつ!
エントリーした鋸はこちらで確認してください。
初めに、大前提として僕がテストした現場の状況を知っていてほしいと思います。
17年生のスギヒノキ混交林で町歩7〜8000本ほどの密植のため、打つ枝の7〜8割が枯れ枝です。
太さは数ミリから3センチまでのものがほとんどであり、林縁や杉の枝で5センチくらいのものが多少ある程度です。
今回のテストはこのような条件での結果であり、地域性、施行方法によって結果が異なることも十分に予想されます。
次に、テストした鋸はすべて新品の状態でテストしています。
それぞれの鋸の耐久性はテストしていません。
最初は良く切れるけど、すぐに切れなくなる、という鋸もあるかもしれません。
その辺りも頭に入れておいてください。
以上をよくご理解いただいた上で、ひとこと。
今回、なるべくいろいろなメーカーの鋸を集めるようにして、また山林枝打ち用とされているものを中心に選択しました。
でも、実際に枝打ち用とされている鋸でもそれぞれはっきりとした差が出ました。
林業の枝打ちは大体25年生までには打ち終えるもので、それほど太い枝ばかり打つものではないんです。
(密植の吉野と粗植の地域では差があるとは思います)
それでは、早速今回のエントリーの中で最強と僕が個人的に思うものから順に紹介して行きます!
(重量は実測です)
1位 天寿刃物本舗(ゼット)天寿270
・115g 板厚0.6mm 2.4mmピッチ
・挽き味軽く、切れ味最高、まったく力がいらない
疲れないし理想の枝打ち鋸
・数ミリの枝から5センチ程度の枝まで枯れ枝、生き枝問わず、完璧に切れる
・0.6mmということでぺらぺらだけど、挽くときにまったく引っかからないし、軽く挽けるので鋸が曲がることがない
ただし、切れ味が落ちてきた時に、力を入れて鋸を曲げてしまいそう
・目立ては一回くらい上目を押さえられるか?
ただ、上目がリズムよく角度を変えてあるので(これが切れ味の秘密?)、同じように直すは難しい。
替え刃も1000円ほどなので潔く交換が吉かも
・板厚0.7mmもあるが、270mm以上ならそれでもいいかもしれないが、このキレッキレの軽い挽き味がどうなるか
・枯れ枝、生き枝ともに断面はきれい
![]() 切れる!替刃が安い!【果樹剪定専用】天寿替刃式鞘入剪定鋸270mm本体 |
2位 ヒシカ 徒長枝切り240
・95g 板厚0.7mmか? 2.7mmピッチ
・本体が非常に軽く、挽き味も軽いがひっかかりがあって多少力が必要
・天寿はスルスルと切れて行き、ヒシカは良くかかって「下がり」がいい
ともに切れ味は素晴らしいが性格が全く違う
好みとは思うが、かかりもなく力を入れなくても切れる天寿の凄さが際立つ
・使っている時に、キーンキーンという鋼の響きが心地よい
・目立ては十分可能
細くなるまで使って行きたいと思わせてくれる、目立てできればだけど
・枯れ枝、生き枝ともに断面はきれい
![]() 【のこぎり】ヒシカ印 徒長枝切 240mm 替刃 |
3位 ゼット パイプソー先細240
・110g 板厚0.6mm 1.5mmピッチ
・本体は軽く、挽き味も軽く、そして切れる
・ひっかかりもなくスルスル打てる
・ピッチが細かいため、太い枝を落とす時に目詰りし、とたんに「下がり」が悪くなる
・目立ては不可能
でも、替え刃も300円程度(!)なので切れ味が落ちたり曲がったら即交換で良いと思う。この安さはすべてを癒します
・パイプソー先細にはケースがついてないから、最初は剪定こま目を購入してケースを手に入れよう
(ちなみに剪定こま目の刃とパイプソー先細の刃はカタログ上まったく区別がつきません)
・枯れ枝、生き枝ともに断面はきれい
・普通のパイプソーは全国どこにでも売っていると思うが、やはり先細を購入すべき
こういう狭いところに突っ込んでいったり、
ブランチカラーと枝の間を打つときに斜めに鋸を入れたい時もあるので、先細で、鋸幅も細い方が良い
4位 シルキー ゴム太郎細目270
・150g 板厚1.2mm 2.3mmピッチ
・ひっかかりがないのに、多少ゴリゴリとした感触で切れて行く
・挽き味は軽く、滑るようなゴリゴリ感で切れる不思議な感じ
・下刃が90度近いがひっかかりはない。ひっかかりと下刃の角度は関係がないようだ
・板厚が薄すぎず、剛性感があり使いやすい
・グリップが小さめで枝打ち用途には向いている
・目立ては十分可能
・枯れ枝、生き枝ともに断面はきれい
![]() 竹の切断、造園業の方にノコギリ ゴム太郎 細目 270mm 鞘付き |
5位 サムライ チャレンジ270mm
・170g 3mmピッチ 板厚1.0mm?
・刃が薄く印象よりは軽く感じる
・かかり具合が良いとも悪いともいえないが、1cm以下の枯れ枝などは引っかかってうまく切れない
・カーブ具合が微妙。意味があまり見いだせない
・カーブソーであり切れ味も良く、ピッチも細かいということで期待していた分、予想が外れた印象
サムライなら「果樹」もしくは「竹」が枝打ちには最適か
・枯れ枝、生き枝ともに断面はきれい
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以上が今回テストした中で林業での枝打ちに使えると判断したものです。
今回、果樹用とされているものが上位に来ました。
果樹はその剪定が生育そして売り上げに直結するもので非常に重要です。
林業の枝打ちもスパンが(恐ろしく)長いけど同じですよね。
ただ落とせばいいってものじゃないでしょう。
今後は先端や鋸の幅が細く、板厚が薄くて、ピッチが3mm以下のものを探して使っていこうと思います。
次回N-1はこういう鋸にしぼって開催したいですね(お金貯まったらね!)
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追記
板厚0.6mmの鋸をメインで使ってみての感想ですが、やはり刃が弱い。
刃先が丸くなるのはまだしも、欠けてしまっているものも。
一週間使えないですね。
だいたい4、5日(目安です!)で目立て、もしくは交換でしょう。
やはり0.8〜1.0mm程度がバランスが良いかも。
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鋸メーカーはどうやら山林内での作業だから枝も太いし木も切るだろうし、丈夫なしっかりとした鋸が必要だろうと考えているのかもしれません。
もちろん、普段使いの腰鋸はそうですが、枝打ちに限れば事情は異なります。
木の生育を左右する大事な作業が枝打ちです。
それは造園や果樹の剪定となんらかわりがないことが今回はっきりしたと思います。
最後に全11種の鋸で枝を試し切りした動画を載せときます。
比較方法が浮かばずに違いが分かりにくい動画だけど、少しは参考になるかな。
それでは後編へ続きます!
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コメント
今年はうちの職場で8年ぶりくらいに枝打ちの仕事が有るそうです。
当時の対象はトドマツだったので主にビッグボーイ荒目を使っていました。
その他にゴム太郎も持っていますが枝打ちでは未使用。
今年は出来杉さんの記事を参考にしようと思ったのですが、対象木により鋸も変わってくるのでしょう。
ビッグボーイはエントリーに入っていませんがどうでしょうか?
仕事はもうしばらく先ですが、エゾマツが対象なので何がよいのか思案中。
疲れを考慮すると両手タイプのビッグボーイ2000の替え刃を調達して、ゴム太郎も一緒に持って行くという事をと考えていますが、出来杉さんは片手タイプの鋸を一日中使っていて疲れないですか?
ちなみに枝打ちの対象となるのは2mまでだそうなので、作業は地面から届く範囲となりそうです。
同じ造林地で調整伐も行うので片道1時間の現場に何日通う事になるのやら。
雪が積もって、現場にたどり着け無くならなるうちに作業終了となると良いのですが。
投稿: 村人 | 2013/09/26 01:24
ビッグボーイは吉野の枝打ちには向かないかなあ。
両手で挽くほどの枝はこちらにはないんです。
片手でも、手曲がりタイプ(ゴム太郎タイプ)なら力をかけやすいので疲れは全くないです。
というか、こちらの枝は1〜2cmがほとんどなので、むしろ力をいれずに鋸の重みでシャッと挽いて、どんどん枝を落として行く感じなんです。
もし時間があれば、僕がそちらに行った時に、そういう現場も見る事ができたら勉強になるだろうなあ。
投稿: でき杉 | 2013/09/26 19:01
枝払いも地域によって事情が違うんですね。
今度来られたときに、うちから歩いていけるトドマツの造林地をご案内しましょう。
先ほど確認したら枝払いが必要な時期になっていました。
投稿: 村人 | 2013/09/29 18:59
村人さん、ありがとうございます!
詳しくは後ほど。
投稿: でき杉 | 2013/09/29 19:15
Nー1グランプリ拝見しました。
アサリワケ無しの鋸で選ぶということですが、天寿もパイプソーもアサリわけ有りのノコギリですけど…
投稿: 愚z | 2014/09/17 00:10
愚zさん、たしかにそうなんです。
長勝さんにも同じことを言われました。
ただ、一般的なアサリわけでないので、僕は全然気づかなかったのです。
投稿: でき杉 | 2014/09/18 22:31
若葉マークですが、吉野の奥1300mで枝打ち作業、すべてヒノキ22年生です。林相は亜高山帯に近く、ぐちゃぐちゃの枝を落としてます。この記事で天寿を早速購入。抜群です。ありがとうございます。時間計りましたが、60%短縮されました。
投稿: もりもり | 2014/09/27 17:56
もりもりさん、それは良かったです!
でも、天寿0.6mmは耐久性がないので、僕の使い方では3日〜5日くらいしか持ちませんでした。
(その後もだましだまし使いますが、、)
その後、丸源鋸の0.7mmを使ってますが、切れ味は天寿なみで倍以上長持ちします。
天寿の0.7mmも手に入れたので、今年の冬は0.6と0.7でいろいろと比較してみようと思います!
投稿: でき杉 | 2014/09/30 21:52
でき杉さま、ご情報ありがとうございます。丸源探します。天寿は同じく一週間で替え刃換えました。この早さは捨てがたいので替え刃三個注文しました。雪の中の作業に確実になるので憂鬱です。行き帰り歩きとモノレールで二時間半かかるので遅々として終わりません。
投稿: もりもり | 2014/10/24 14:02
出来すぎさんも吉野との事、以外と近くかもまた色々教えてください。東吉野の森口です。丸源鋸さっそくAmazonで購入、試します。場所によって枝が違うので何日かしないと評価できないかも
投稿: もりもり | 2014/10/24 20:06
もりもりさんは東吉野でしたか!
もしかしたらどこかで出会っているかもしれませんね。
丸源はいいですよ。
枝打ちの季節になったら、丸源と天寿中厚を比べてみる予定です!
もりもりさんの使用感も教えてくださいね。
投稿: でき杉 | 2014/10/24 23:10
昔は鉈で枝打ちをしていました。最近たまに枝打ちの仕事があり、ノコで打ちます。玉鳥の枝打ち専用ノコを使いますが、2日くらいで刃を換えるので、ノコ代もバカになりません。5ダースくらい使ったかな?で、このブログを見付けて天寿を買いました。ペナペナしているのと、鞘に入れにくいのは欠点ですが、安くて良く切れますね。今日一日使っただけなので、寿命はわかりませんが、2日使えれば助かります。丸源大地細目も買って使ってみたいです。
投稿: で~ちゃん。 | 2016/10/25 20:06
で〜ちゃんさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
2日でノコを替えるなんて「本物」ですね!
だいたいそれくらいでどうしても切れ味落ちてきますからね。
丸源の細目は天寿よりも長持ちしますよ。
ただ、やっぱり挽きの軽さは天寿が上ですね。
軽快さを取るか耐久性を取るか、これは現場に合わせて、あとは好みだと思います。
投稿: でき杉 | 2016/10/25 22:43
初めまして!
高知で造林業している者です!
土佐の西山商会の枝打ち専用鋸は、目立てが出来る者しか扱えないもので、プロ用だと思います。というより鋼作りの物は、鋸、鉈、包丁でも目立てなくして切れるものはないですね!例えば鍛冶屋さんが鋼で造ったものは、現場の枝打ち材の堅さによって目立てをします。それが目立ての出来る鋸の良さであり、手で目立てした物に勝るものなしです!
投稿: 造林業only | 2020/01/15 19:24
追記
西山商会の枝打ち鋸は、鋸の重みで軽く引いていけるかんじです!目立てを極めると感覚的には豆腐を引いているようになります!
鋼で、目立てすれば本当にチビくれるまで使えます!
投稿: 造林業only | 2020/01/15 19:32
造林業onlyさん、情報ありがとうございます。
確かにその通りですね。
テストで使用した西山の鋸は現在、目立て職人さんにきちんと研いでもらって使っています。
替刃式は、自分でダイヤモンドヤスリを使って簡単な研ぎを行うのですが、やはり良いものは僕では手がだせず。。。
良いものを手入れして長く使っていきたいですね。
投稿: でき杉 | 2020/01/18 10:40