地上30mの山師
昨日から新しい現場に入りまして、なかなか刺激的な仕事なのでご紹介します。
林業のちょっと特殊な仕事に「線下(せんか)」林業があります。
山から山へ高圧電線が渡っているのは、皆さんご存知でしょうか?
まあ街で見るそれと同じなのですが、その電線の下に生えている木を処理する仕事があるんです。
成長した木が電線に触れてしまったら大事(おおごと)ですからね。
普通は線の下にある木は全部伐採してしまうのですが、場所によっては、木の穂先だけ飛ばす(伐る)という場合があります。
そして今回の現場がそれ、穂先飛ばしの現場なんです。線の下のヒノキのてっぺんが伐ってあります。
わかるかな〜
てっぺんはこんな感じ
どんな感じで仕事しているかと言うと。画像中央の人、見えますか?
拡大
さらにドン!
じゃあ、こんな穂先までどうやって登っているかというと。
まず、普通に6mのムカデ梯子をかけます。
で、次に使うのが、ワンタッチラダーという代物。
これを木にペタペタと付けていきます。
よくわかんないと思いますが、「ペタペタ付ける」としか言い様がありません。
この現場では大体3〜4本ワンタッチラダーを付けていきます。
もちろん、下で補佐する人がいて、登っている人が持っているロープにラダーを付けています。
ラダーで登ったら次は枝を登っていきます。
絶対に安全帯がフリーにならないように2本(2in1)を交互に掛け変えながら登ります。
これが結構面倒ですが安全第一です!
んで、てっぺんまで登ったら作業開始というわけです。
鋸で穂先を挽くと想像以上に大きく揺れるんですが、別に怖くはないんです。
下はまったく見えないですから。こんな感じ
鋸は良く切れるものを2丁持って登ります。
切れないとシンドイし、万が一落としてしまったら取りに行く事なんてできない(したくない)ので、2丁持ってます。
で、てっぺんでの作業が終わったら、ゆっくり降りていきます。
安全帯は降りる方が交互にかけかえる回数が増えて面倒ですが安全第一!
登る時に付けたラダーを外しながら、ゆっくり降りていきます。
とにかくここで焦って事故したらなんにもならないので、とにかく確実に降りていきます。
大体30mクラスの木だと一連の作業を終えるのに一本40〜50分かかります。
でも、登ってるとそんなに時間がかかっている感じがしないのが不思議。
僕は空師やアーボリストじゃないけど、こんな林業もあるという報告でした!
いろんな現場(線下)を移動しながらこの作業は一ヶ月以上続く予定です。
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コメント
気持ちよさそうですね。でもちょっと木がかわいそう。
何年か前に、線下で穂先飛ばしてあるスギを伐採したことがあります。上から下まで腐れが入って材としては…でした。
帰りは僕なら迷わず懸垂下降しますね。下りの2in1かけ替えはメンドクサ~なので。
それからワンタッチラダーをぶり縄にすれば、グランドが不要で1人作業にできますし。
投稿: だん | 2009/08/26 22:05
だんさん、おはようございます。
穂先を飛ばすのか、元から切るのかは山主さんの意向のようですが、腐れがはいってしまったら元も子もないですね。
道具の仕様に関しては、電力会社(と仕事を受けた事業体)から指定されてます。
胴綱の太さまで決まってますから。
僕も最初いろいろ考えて提案したんですが、採用の余地ゼロでした。
仕事中、電力会社の人、ずっと鉄塔からみてるんですよね。
退屈そうですが、「こんな仕事もあるから電気代は高いのね〜」
と思ったりもして。
投稿: でき杉 | 2009/08/27 06:51
>「こんな仕事もあるから電気代は高いのね〜」
むふっ(^^♪
もしかしたら本当にそうかも知れませんね。
米国では資格のあるアーボリストだけが電力線から3m以内に近寄ることが許されていたりしてます。
電力会社と樵との関係ってのはそーゆー長い歴史がある関係だってことでしょうか。
私も重電出身なので、運命でまかり間違えて送配電の分野に行ってしまって、今頃鉄塔から樵さんを眺めていた可能性があったかも~ なんちって(笑)
色々な技術開発が行われているのに何故簡単に変えられないかというと、それだけ多くの目に曝されてケナされて磨かれた技術だけを使うという主旨のようですね。
新しい技術は規格案にまとめてANSI委員会に申請し、意見聴取をおこなって裁可されはじめて基準書になるようです。 TCIAという組織がANSI-A300案の提出母体になってますね。
そういう基準改定が日本に波及するためにはもういっぱつ似たような手続きが必要になるんでしょうね。
森真一の♪襟裳岬 ぢゃないけれど
わけの判らないことで悩んでいるうちに老いぼれてしまう・・・
んな事ばかりぢゃ困るんですけどねぇ(^^;
投稿: 月光仮免 | 2009/08/27 08:53
でた~ぁ~ぁ~(;´д`)伐るより厄介な「芯止め」
> 腐れがはいってしまったら元も子もないですね。
線下補償で定期的にお金が入るからイイんじゃない?
止めた所の枝が立ち上がって、伸びた頃、また芯止めするんでしょう。
> 一連の作業を終えるのに一本40〜50分かかります。
降りないで、隣木に移動しながら作業すると早いです。登っている木を揺すって乗り移るとか、隣の木をカギ棒で引っ張って寄せるとか・・・・どこぞやの枝打ち名人みたいに・・さ・・・
━━Σ(゚д゚;)━━!!
ダメだめ、ダーメ~!
> 仕事中、電力会社の人、ずっと鉄塔からみてるんですよね。
“ケプコ”さんが、そんな作業を許すはずも無く・・・
電力会社さんの仕事に能率は考えなくて良いと思いますね。安全第一、何が何でも安全第一。重大な事故が発生すれば、全国の電力会社の支障木処理作業(高所作業もかな)が一斉にストップしてしまいますから。
電力会社さんもご覧になってらっしゃいますか、出来杉さんのブログ。
あのナス管の使い方はどうかと思いますよ~。
投稿: yama | 2009/08/27 18:19
月光仮免さん、こんばんは!
いつも詳しいお話をありがとうございます!!
>米国では資格のあるアーボリストだけが電力線から3m以内に近寄ることが許されていたりしてます。
そーなんですか!
日本ではそういうのないですよね。
っていうかないから僕らが仕事しているんでしょうけど。
一応僕らの地域では電力会社の仕事を受けるときには、講習を受けましてみっちり指導をうけます。
んで、資格を取得して仕事するんですけどね。
とにかくとにかくyamaさんも書いていますが、効率よりも安全第一ということみたいです。
でも、安全第一すぎて疲れてしまうってこともあったりして。
投稿: でき杉 | 2009/08/27 20:01
yamaさん、こんばんは!
>止めた所の枝が立ち上がって、伸びた頃、また芯止めするんでしょう。
この現場は2度目の芯止めでした。
現場では「山主さんはもう元を取っただろう」って話してましたけど、僕としてはやっぱりなんかもったいない気がして。
>降りないで、隣木に移動しながら作業すると早いです。
( ̄ー ̄)ニヤリ わかりますわかります。
でもホント効率とかではなく、絶対に安全に事故のないようにするのがなによりも優先されるので、見てる見てないに関わらずきちんと言われた通りにしてますよ〜。
>あのナス管の使い方はどうかと思いますよ~。
???
ナス管ググッたけど、???
投稿: でき杉 | 2009/08/27 20:14
師匠お疲れ様です
『山師さん』、『空師さん』憧れの職業です
(まあ、私には無理ですが・・・)
今日、仕事の合間に二回目の足縄木登り&ロープ投げ上げチャレンジしました
檜でやったんですが、ロープは皮に引っ掛かり3メートル位、地下足袋でも滑ってしまいました・・・(檜なんかは不向きなんですか?それとも私が下手だから?)
ところで、足縄とロープを使っての木登りは実戦
向きなのでしょうか?
枝打ちの時、梯子が届かない場合に使ってみようかと思っているのですが、両手にロープを持っていると枝にたどり着いても・・・
ご教授お願いします
投稿: 冥王星 | 2009/08/27 20:48
冥王星さん、こんばんは!
師匠だなんてとんでもないですよ〜。
まず、足縄はヒノキでも問題ないはずです。
とにかく縄のサイズが重要なので、この当たりもう一度記事にまとめるつもりでいますので、もうしばらく待っててください。
次に、ロープの投げ上げは僕でも皮にひっかかってしまって全然上げられない事があります。
杉、ヒノキ関係なくです。
あとちょっとした数センチの枝が越えられなかったりすることも。
>足縄とロープを使っての木登りは実戦向きなのでしょうか?
僕は仕事ではやったことはありません。(キッパリ)
ここだけの話、足縄+手にロープをかけて登ったのは、youtubeの動画を撮ったときが初めてでして、二回目がチャンピオンズの早木登り競争でした。
もちろん足縄だけなら、普段の仕事では使わないけど、いざという時に登ったりしています。
>が、両手にロープを持っていると枝にたどり着いても・・・
確かに。
でも、枝下まで登って来たら、あとはロープを放して(下に落として)枝をつかみ(足縄も落として)よじ登ったら良いと思いますよ。
疲れますけどね。
降りるときも大変ですし。
とにかく足縄登りに関しては、これまで「紹介」くらいのブログしか書いてないので、きちんと登り方から降り方までを再度まとめたいと思います!
投稿: でき杉 | 2009/08/27 21:57
「線下林業」なんて感じで
コンテナ苗を思いっきり密植して
さらに施肥を繰り返し短期間で
利益を回収するなんてことも可能ですねぇ(笑)
投稿: 祝い杉 | 2009/08/30 21:59
線下に山持っている人は余裕だよね!
投稿: でき杉 | 2009/08/31 20:16
あら、出来杉さんの方では「ナス管ヨーシ!!」ってフックを掛け替える度に、唱和しながら登らないんですか?(ナス管=フックの事。地上の作業員も復唱する事になっているので“唱和”)
あのフックですが、建設現場などで、単管(鉄パイプ)やボルト穴に掛ける事を前提に作られていますから先細りでしょう。それに、カラビナみたいにゲート側に張力を担わせるという考えが無いですよね。
で、基本的に腰より上に掛けて使うべきモノなのなのですが・・・・
「オレ様が落ちるわけね~だろ。監督が着けろって、うるせーから着けてるだけで、オレとしちゃ~こんなもんは作業の邪魔になるだけなんだけどな」
ってな考えの、サル並の(おっと失礼、“頭”がじゃなくて“登りっぷり”の事ね)御年配の木登り名人達は足元にフックがあってもヘーキ。その上、墜落した時に、フックにストレートに荷重がかからず、フックを曲げる方向にチカラがかかる様な掛け方もお構いなし。どうせ着用するなら、ちゃんと使おうよ~。
サル並の名人さん方に太った人は居ませんから、その状態で墜落しても、一応は持ちこたえてくれるとは思いますがね。
足縄木登りを「芯止め作業」に活用するとすれば、下降時に隣木の下から4~5段目の枝にロープを掛けて来るというのはどうでしょう。
そのロープにアッセンダーをかませて登れば、足縄木登りでも、安全が確保されているので、許可になりはしませんか?
「yama、お前が電力会社に言ってみろ」って仰られましても・・・・ウチの方じゃ、そんな高いところまで枝打ちしてないんですよ。連結梯子で一番下の枝までとどいちゃいますから。
投稿: yama | 2009/08/31 23:45
yamaさん、「サル並み」のくだりでニヤついてしまったしまったのは僕だけではないと信じてます。
で、「ナス管」の唱和はしないですね〜。
だって、架け替えまくりですよ。
その度にきちんと言うなんて、それは無理があるなあ。
僕たちが使っているものは、現場監督(電力会社の人と事業体の責任者)が認めた電気工事用の安全ベルトです。
ホント使いにくいんだよな〜。。。
>足縄木登りを「芯止め作業」に活用するとすれば、下降時に隣木の下から4~5段目の枝にロープを掛けて来るというのはどうでしょう。
そのロープにアッセンダーをかませて登れば、足縄木登りでも、安全が確保されているので、許可になりはしませんか?
いや、実は今日、現場で大きな松の枝下ろしがありまして、僕も許可をもらってアーボリスト用具を持っていってヤル気満々だったんですが、最初のスローラインが近くのヒノキの枝にひっかかり落ちてこなくなりまして。
で、面倒だから足縄でひょいと登ろうとしたら「ダメ〜!」
仕方なく梯子に安全ベルトでえっちらおっちらスローラインを回収して、絡まったのをほどいていたら、別の人が梯子で松に登ってました(´Д⊂グスン
でも、yamaさんご提案の方法はちょっとプレゼンしてみようかしら。
うまくいったら報告します!
投稿: でき杉 | 2009/09/01 21:33
ちょっと話題の流れと方向が違うかも知れませんが、でき杉さんなら多分チェック済みかと思われる非常に優れたHP(ブログ?)があります。
高所作業+安全というキーワードで考えると、木登り仲間たちに広く認識しておいてもらいたいブログ ロープアクセス技術の広場 Rope Access です。
→ http://blog.livedoor.jp/rope_access_eng/
勝手に紹介してますんで、そこんとこよろしく でぇ~す。
投稿: 月光仮免 | 2009/10/07 09:51
月光仮免さんありがとう!
これは知りませんでした。
いまの僕の頭ではちょっとついていけないですが、アーボリスト講習も受けることだし、ちょっとずつ勉強していこうと思います。
にしても、ロープアクセスの仕事って結構あるんですね。
こういう仕事がある事自体知りませんでした。
以前yamaさんが紹介してくれた
http://www.ropeclimbing.jp/index.html
http://www.rope-access.co.jp/
なんかも参考にしていこうと思います。
ありがとうございます!
投稿: でき杉 | 2009/10/08 12:33